学習者オートノミーとは

学習者オートノミー(学習者の自律性)の定義には、諸説ありますが、以下のように定義されると言えます。

学習者が自らの学習におけるニーズを分析し、計画を立て、実行し、それを自己評価するという一連のプロセスを、自ら管理できる能力と責任意識(Holec, 1981; Benson & Voller, 1997; Little, 1991; Littlewood, 1996; Dickinson, 1993)

つまり、「学習者オートノミー」とは、学習の意思決定プロセスに学習者自身が主体的に関わっていることを指します。他者に言われたことをやる学習ではなく、学習者自身が自身の学習プロセスを認知し、そこに自分なりの試行錯誤があることが重要なのです。

学習者オートノミーを重視する概念は、1960年代後半のヨーロッパを発端として普及しました(Gremmo & Riley, 1995)。オートノミー普及の中心となったのがフランスのNancy大学のCRAPELと称する自律学習を促進するための施設です。このようなセンターは、セルフアクセスセンター(Self-Access Center: SAC)と呼ばれ、学習者の自律性の育成にとって大きな役割を果たすとされています(Benson, 2011; Gardner & Miller, 1999)。

自律性の育成を主眼とするSACには、様々な形態があります。しかし、理念のない単なる教材を集めたリソース・センター的なSACでは、なかなか学習者の自律性は育たないのです。どんなに設備を整えても、学習計画を立て実行する過程で相談ができる専門教員の支援がなければ、学習者の自律性を育てるのはさらに困難です(Benson, 2001)。そうした理念から、自律的な語学学習を促進するための専門教員「ラーニング・アドバイザー(学習アドバイザー)」の必要性が着目されはじめたのです。

ラーニング・アドバイザーとは?

ラーニング・アドバイザーは、カウンセラー、ヘルパー、ファシリテーター、メンター、またはコンサルタントとも呼ばれることもあるりますが、その役割は、学習者の学習に対する内省(振り返り)を、「対話」を通して育成することにあるあます(Kelly, 1996; Mozzon-McPherson, 2001; Mynard & Carson, 2012)。 

一般的に「アドバイザー」というと、学習の個別指導を想像するかもしれませんが、自律学習の分野に携わるアドバイザーは、学習者に一方的にアドバイスを与えるのではなく、1対1の対話を通して、語学学習者の自律性を促します。アドバイザーは、学習者との対話を通して、学習者のメタ認知能力の育成を促進し、学習者の自律性を育成する専門家なのです。

つまり、「アドバイジング」という言葉とは裏腹に、アドバイザーの基本姿勢は「アドバイスは与えない」ことであり、学習者のメタ認知能力を育成するために「質問は質問で返す」ことなのです。アドバイザーの最も大切な役割は、学習者のメタ認知レベルに応じて、学習者の内省を深める対話を学習者に寄り添いながら行うことで、こうしたアドバイザーが学習者と1対1で行う対話は、日常会話と大きく質が異なります。対話の中でアドバイザーは、学習者の内省を深め、「意識改革」を誘導するのです。

RILAEでは、こうした特有の専門知識を有する学習アドバイザーのノウハウを学べる「学習アドバイザー養成プログラム」をご提供しています。